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思考散逸

ネットの宇宙の片隅の論理と思考の実験劇場

「女オタク」の謎~オタク社会の変容に対する一考察

アニメ 考察 サブカル

最近はてなブックマーク(以下はてブ)で遊ぶことを覚えました。

はてなブックマークって? - はてなブックマーク


はてブはエントリ中心型SNSなのが最大の特徴で、ブックマークに対しコメント付できることで擬似フォーラムが形成されます。ツイッターはリツイートで各自がばらばらに情報を拡散していきますが、はてブはフォーラムが維持されたまま情報拡散が続きます。ここから、コメントでつながる独特の文化が形成されています。*1

ツイッターと比較した時、違うのは空気読む必要がない事。私みたいなKYが知らない話題に気楽に参加出来て、発酵瓶の泡のようなゆらめくたくさんのコメントのなかから世論めいたものがいくつか収束し、議論が醸造されていくのが楽しくて、飽きずに眺めています。*2

そんなこんなで遊んでいたら初めて人気コメ入りしました。わーい。
嬉しかったので、記念にさらに深彫りしてみます。時間をおいてしまい今更感もありますが例によって気にしない。

 

まず、元記事はこちら。面白かったのでステロタイプじゃないオタク女性の実像に興味がある人は通しで読む事をおすすめします。

www.itmedia.co.jp


「オタク女性は大きく4つの勢力に分類される。すなわち『夢女子』『女オタク』『腐女子』『声オタ』」という内容です。

対し、形成されたブクマコメント欄がこちらです。
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1605/04/news006.html

 

そして自分の発言より引用↓

女オタク:作品の考察など作品構造そのものに執着する人。文学、映画等と親和性高し。 つか自分がこれ。他誰もいなかったらちょっとだけ寂しい。

嬉しいからさらに考察…このエントリを記述する行為がまさに模範的女オタクです。我ながらちょっと感心しました。
女オタクって何?腐女子とどう違うの?っていう方の参考になれば幸いです。

コメントから見える読者側の感想

さて、自分としては非常に興味深く拝読した元記事ですが、ブクマコメを見る限り???となった方も多いようです。目についたのはこのあたりでしょうか。*3

  • 女オタクの定義がわからない
  • ベン図による図説が実態に対しわかりづらい
  • 腐女子への差別意識が感じられる
  • そもそも安易に分類されること自体不愉快

確かに誤解を生みやすい書き方ではありましたが、これまであまり顧みられることのなかった「オタク女性社会」に対する考察のたたき台としては十分すぎる良記事だと思ったので、私なりの考察という形で弁護しようかと思います。少なくとも私には、この記事を書いた人に悪意があったとは受け取れません。
弁護側としては何が問題になって誤解が生じたのかという点から見ていこうと思います。

「女オタク」とは何か

実はブクマコメントを書いた時、自分でも「女オタク」という呼称に違和感を覚えました。
思うに、「作品ありきでキャラクターが好き」な人、作品そのものを愛好する人を「女オタク」と呼んだのがまずかったのではないでしょうか。
元記事を見ると、考察の前提として必要になる「オタク」という語の定義がしっかりなされていません。
コメントからは「オタクってアニメ、マンガ等のキャラ系ポップカルチャー*4を愛する人の総称じゃないの?」という疑問が出ているように感じられます。
つまり、「女オタクを自称する=自分たちこそが正当なオタクだと思ってるんじゃない?」と受け取られたのではないか、と私は考えます。
思うにそれは誤解です。「オタク」という語には2重の意味があります。
ここからはアニメの分野に絞って歴史的変容を追ってみます。


オタク社会の変容と「オタク」を名乗る意味の変化

オタクという単語は80年~90年代以前と2000年代以降で大きく意味を変えました。*5
90年代以前の「オタク」という語が指す対象は今でいうガチオタ、「一つのコンテンツを骨の髄までしゃぶりつくすほど鑑賞し研究する人たち」でした。

1980年頃のオタクの生態はアオイホノオ島本和彦)に生々しく記録されています。*6

 

アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)

アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)

 

 


当時と現代との最大の差は何といっても記録メディアの価格とコンテンツの量に尽きます。
BDやDVDなど当然無く、記録媒体といえばベータかVHSかの時代。どちらもまだ高価なものでした。
当時のオタク先駆者たちは脳内に映像を焼き付けるしかなく、場合によっては映画館や店頭デモに何時間も張り付いて作品を鑑賞し倒したのです。
時代を経て90年代に入っても、まだ今でいう「ライト層オタク」達はアニメが好きな人ぐらいのゆるい扱いだったように思います。
今でいう深夜アニメに該当する内容の作品は主にOVAとして供給されており、一部のユーザー、オタクと呼ばれる先駆者たち以外に知られることはあまりなかったのです。

 

一部の濃い「オタク」の周りにゆるくアニメ愛好者が分布していたオタク社会は90年代後半に入って変化を迎えます。

転機は95年の「新世紀エヴァンゲリオン」です。
劇場アニメーションなどの例外を除いて、いわゆる「大きいおともだち」向けのTVアニメが社会現象に至るまでの大成功をおさめた初の例でしょう。
この時点でアニメーションにおける製作委員会方式の手法が確立しました。
製作委員会方式について書きだすとエントリ一つ分消費するほど長いので詳細は省きますが、これによって特定の商品のプロモーション以外の目的でTVアニメを作ることが可能になりました。純粋に作品のための作品、「アート」としてアニメを作ることができるようになったのです。
昔の民放局では販促、特に玩具タイアップ以外のTVアニメーションを作ることはとても難しいことでした。
人類補完計画とは何だったのか、それが成功か失敗だったのかはわかりませんが、アニメーションの制作環境はある意味エヴァで補完されたのです。*7

 

ここで時代によるコンテンツ量の増加を見てみましょう。

gigazine.net


こちらに年間に放送されるアニメーションの本数を記録した動画が紹介されています。
機動戦士ガンダム」初回放送の79年には37本だった年間新作本数が、「魔法少女まどか☆マギカ」の2011年には164本(!)と脅威の本数に伸びています。
アニメーションを取り巻く環境は変わりました。カジュアルコンテンツになったのです。
かつてないほどたくさんのユーザーが気軽に大人向けアニメを楽しむようになり、ネットの普及により二次創作も一般的なものになりました。
昔、畏怖の念をこめて呼ばれた「オタク」という呼称は「オタ系コンテンツ愛好者全般」を指す一般名詞に変化したのです。*8


女オタクとは何か

ここまで考えたとき、最初の「女オタク」という呼称に対する違和感の正体がわかります。
かつてはどうあれ2016年現在では英語の「geek」に近い意味合いで「オタク」を使用した場合、無用の誤解が生じることのほうが多いでしょう。
元記事にある「作品ありきでキャラクターが好き」つまり登場人物よりも作品性そのものに愛を注ぐ人達、かつての先駆者たちに近い立ち位置で作品を鑑賞し愛する人たち、私も含めた少数の人たちを現代において何と呼ぶべきか。

 

…わかりました。「マニア」です。
私たちは作品の魂そのものにマニアックな愛を注いでいるわけです。

 

以上の考えに沿うようベン図を新たに起こしてみます。4ベン図作図の指摘に従ってみました。

f:id:nyanmage00:20160520113713j:plain


ただ、作図の正確さより、私にはブクマにあった「タグがたくさんついてるイメージ」というコメントが非常に鋭いように感じます。
「人間の行動はそれまでに身に付けた複数のタグの組み合わせにより一定の類型にパターニングされるのではないか」というのが現在の仮説です。

 

さて、ここまで長々書き綴ってきましたが結局何が言いたいか。

「みんな!仲良くしよう!」…結局これだけだったり。

 

ぶっちゃけて申し上げます。
マニア、特にキャラ萌えがなくてもアニメやマンガやゲームを愛好できる私のような生粋のマニアはオタクといえども完全マイノリティです。
他のオタク友達に「○○が好きなんだけど」と振ろうものなら「何!どのキャラが好きなの!?」と質され「いや…別に…」と答えようものなら宇宙人扱いされたり「△△!△△は素晴らしい!絶対はまるから!」などど数時間拘束され強制的に入信を迫られたり…といった思い出が走馬灯のように頭をよぎってうわあああああ(ry

 

…大変取り乱しました。何かがフラッシュバックしたようです。

 

さて、私は自分が多数勢力などと思ったことはこれまで夢にもありません。
好きなカップリングがBLだろうと男女だろうと個人の嗜好であり、それによって人としての優劣が決まるなど土台ナンセンスです。
腐女子だろうと夢女子だろうと関係なく、嗜好を押し付け合わずに仲良く住み分けることができればいいなと願います。
ついでに少数派のマニアにも居住権が認められればいいな、とも思います。

 

ところで、発端になった私のブクマコメですが、星をつけてくれた方が16名いました。
マニア属性をもたない人には???というコメントだったので、きっと私と同じタグがついている方でしょう。
ありがとうございました。この場でお礼申し上げます。

 

*1:はてなIDは1年ぐらい前に取得していますが、はてブツイッターも2週間ほどしか触っていません。にわか乙。もう少し使い込んだら記事修正するかもしれません。

*2:世論なので当然バイアスはかかります。早い時期に投下されたコメントはそれだけで有利になります。

*3:一番スターを集めていたのは「ベン図の書き方が数学的に正しくない」だったのですが、記事内容には直接関係ないので割愛しました。こういうコメントがトップにくるあたりがはてならしいです。

*4:ゲーム、ボカロ動画等の3DCGキャラクターコンテンツもここに含みます。

*5:より正確にはアニオタという人達が生まれた契機は74年の「宇宙戦艦ヤマト」、79年の「機動戦士ガンダム」だと思います。ただし70年代にはまだSFファンと未分化と思われるため、本稿では主に80年代以降に絞って考察します。また、筆者は70年代生まれです。当時の描写は記録と伝聞に頼るものであることをあらかじめお断りいたします。

*6:エヴァ庵野カントクの描写が最高。1巻は対談までついてます。お得です。

*7:制作委員会方式は今でも賛否が分かれる手法であり、利益率やユーザーへの金銭的負荷、権利関係等問題は多数あります。しかし、作品の多様性という意味では一定のプラス作用をもたらしたと考えます。なお、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」は自主製作(インディーズ)です。

*8:アニメ以外の分野では元々の意味を残した例もたくさん見受けられます。また「鉄オタ」「ミリオタ」「声オタ」など、造語に接尾辞的に組み合わせられた場合も意味の変化は少ないようです。日本語変化の法則でしょうか?